先日、大丸東京店の地下食品売り場で、「白イチゴ」を購入したのですが、その際、フランスのテレビ局からインタビューをお願いされました。
シャイな私は、大変心苦しかったのですが、お断りさせていただきました。
日ごろから、もしインタビューを受けたら(恥ずかしいので)断ろうと心に決めていたからです。
皆様はインタビューを受けるのはお好きでしょうか?
さて、今回は、私の弁護士人生のなかで、とても心を悩ませた案件のご紹介です。
※詳細な事情や賠償金額等は、個人情報保護の観点から適宜、捨象、修正してご紹介します。
案件概要
- 被害者: 50代、男性、会社員
- 後遺障害等級: 別表第1 1級1号
- 主な後遺症: 両下肢完全麻痺、直腸障害
- 当方過失: 10%
- 総賠償額: 2億2100万円(過失控除前)
既受領金を除いた過失10%控除後の賠償金額:
- 被害者本人:2億0500万円(内自賠責保険金4000万円含む)
- 近親者慰謝料合計:580万円
この方の案件は、事故直後より相談を受けておりました。
普段は、プロとして、被害者の方に感情移入することはないのですが、この方のときだけは、涙ぐんでしまいました。
今までバリバリ働いていた人が、事故をきっかけに2度と歩けなくなってしまったのです。
トイレもお風呂も一人ではできず、他人の介助が必要。
一生そんな状態が続くのです。
もし自分がこの方と同じ状況になってしまったらと思うと、感情移入せずにはいられませんでした。
事件を受任してから解決まで4年近くかかりました。
この間、被害者の方は、
- 「早く終わらせてほしい」
- 「生きているのが辛い。この世に未練はない」
とたびたびおっしゃっていました。
私は、「同情します」「お気持ちわかります」とは軽々しく言えませんでした。
ですが、プロとして適正な賠償金を勝ち取ることが責務。
気持ちを切り替えて、淡々と訴訟を遂行しました。
医学意見書と裁判の苦悩
保険会社側から提出された医学意見書には、
「自力で日常生活がある程度できる」など、
実情と乖離した内容が書かれていました。
どうしても保険会社に都合の良い意見書が作成されているように感じざるを得ませんでした。
日本社会は、どこの業界にも「忖度」があると思います。
この業界でも、保険会社にとって有利な意見書が出されることがあります。
裁判官は医学の素人であるため、そのような意見書を鵜呑みにするリスクもあります。
良心への訴えと和解成立
訴訟においては、加害者側代理人弁護士や保険会社に対し、
「ご家族が同じ後遺障害を負った場合でも、同じ主張ができますか」と、
人間としての良心に訴えました。
結果的に、保険会社側も被害者に寄り添った内容で和解に応じてくれました。
判決ではなく早期の和解を選んだ理由は、被害者の心情に配慮したためです。
和解金の主な内訳(※過失10%控除前)
- 将来介護費: 約7700万円
- 自宅改造費: 1830万円
- 後遺障害慰謝料: 2900万円
- 入通院慰謝料: 330万円
- 近親者慰謝料: 合計600万円
- 後遺障害逸失利益: 7800万円
※①②⑥は、症状固定時の年齢が若い人ほど金額が大きくなります。
※職業付添人による介護が認められれば、1級案件で3億円超えもあり得ます。
おおむね妥当な金額での和解案が出され、無事に終了することができました。
今回は、後遺障害の内容が非常に重かったため、
- 依頼者に心から満足してもらえたかは不明ですが、
- 少なくとも気持ちの整理はつけていただけたと感じています。
私自身も、弁護士としてだけでなく、人間としても成長させてもらえた事件でした。